岐阜地方裁判所 昭和45年(わ)23号 判決 1971年11月10日
本籍及び住居
岐阜県羽島郡笠松町春日町二九番地
既製服製造販売業
増田利一
大正六年五月一五日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官山岸赳夫出席して審理のうえ、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役四月及び罰金四〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は今次の終戦時の後繊維製品の製造販売に従事し、昭和三三年頃以降は三ツ羽商店名義で個人としてその企業を営み、紳士服類及び婦人用洋服洋品その他の衣類の製造販売を業種として扱い、羽島郡笠松町の自宅のほか岐阜市中問屋町内に店舗を有し使用人も雇い入れていたのであるが、所得税を免れようと企て、
第一、 昭和四一年中分の総所得金額が別紙第一、第二のとおり事業所得と配当所得の合計で金一六、〇二三、一五九円で、そのうち犯則関係が事業所得に関する金一五、七四九、一五九円であり、これに対する所得税額が金七、〇二二、九〇〇円であるのにも拘らず、事業所得につき二重帳簿(元帳、出納帳、売掛帳、買掛帳に関するもの)を作成して売上金の一部を除外し、仕入及び工賃の金額を操作する等して不正の行為をなし、もつて所得の一部を秘匿したうえ、昭和四二年三月一五日所轄の岐阜北税務署において同税務署長に対し、総所得金額が金一、四三〇、五六一円であり、これに対する所得税額が金一六二、七七〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よつて正規の所得税額と申告所得税額との差額金六、八六〇、一〇〇円を免れ
第二、 同四二年中の総所得金額が別紙第三、第四のとおり事業所得と配当所得の合計で金一八、七九五、七四一円で、そのうち犯則関係が事業所得に関する金一八、二五二、七四一円であり、これに対する所得税額が金八、三七一、四〇〇円であるのにも拘らず、事業所得につき前同様の不正の行為をなし、もつて所得の一部を秘匿したうえ、同四三年三月一五日所轄の前記税務署において同税務署長に対し、総所得金額が金一、八一一、七八九円であり、これに対する所得税額が金二六六、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よつて正規の所得税額と申告所得税額との差額金八、一〇五、四〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
右の事実は次の証拠を総合して認定できるものである。
一、 被告人の当公判廷における供述
一、 被告人の検察官に対する供述調書
一、 被告人の収税官吏に対する昭和四三年九月一〇日付、同月一二日付、同年一〇月三〇日付、同年一一月四日付、同四四年一月一四日付(二通)、同月一七日付、同月二二日付、同月二五日付、同月二七日付、同年二月一〇日付、同月一八日付各質問てん末書一二通
一、 被告人作成の収税官吏宛同四四年一月二一日付、同月二七日付、同月三一日付(七通)、同年二月一〇日付各上申書一〇通
一、 石川新三郎に対する証人尋問調書
一、 証人増田ふみ子の当公判廷における供述
一、 岐阜北税務署長作成の虚偽申告に関する証明書二通(確定申告書類謄本添付)
一、 収税官吏石川新三郎作成の前同月一〇日付調査報告書
一、 収税官吏新美康夫作成の前同日付調査報告書
一、 茜谷菊次郎、塩川盛本郎、池田一郎、瀬戸邦彦、佐藤軒、高橋ひさ越、滝本晴夫、頓宮為三郎、花田寿夫、岩田郁夫、野々垣修市、奥村哲郎、河野暢夫、佐藤信一、山根弘志、桑田政治、坪井国彦、兵頭孫一、遠山定重、林鉄志、広田京子、五島良吉、有滝俊男、前田兼政、大滝義雄、松久於松、八木政一、吉田俊逸、吉田久明、酒井時次、清水喜代作成の収税官吏宛各回答書
一、 安達ハルヱ、岡本正、足立金市(二通)、立松宜之、伊藤昌幸、宇佐見信子、栗原茂樹、津本栄一、桜井森明、富田幸一、水野良一、放生満治、林鉄志、下谷寿之、毛利喜弘、大滝義雄、近藤厳、前田俊治作成の収税官吏宛各上申書
一、 田村きぬ江、加藤林一、川下進弘、日野照治郎、八木政一、沢田美好、夫馬満、大槻恭造の収税官吏に対する各質問てん末書
一、 株式会社東海銀行笠松支店長作成の普通預金元帳謄本
一、 押収にかかる四一年分元帳一冊(昭和四五年押第五二号の一)、同年出納帳一冊(同押号の二)、同年売掛帳一冊(同押号の三)、同年日報一綴(同押号の八)、同年買掛帳一冊(同押号の三九)、同年源泉徴収簿一綴(同押号の四七)
一、 押収にかかる四二年分元帳一冊(同押号の四八)、同年出納帳一冊(同押号の四九)、同年売掛帳一冊(同押号の四)、同年売掛帳一冊(同押号の五〇)、同年売上帳一冊(同押号の五一)、同年売掛帳一綴(同押号の五二)、同年売掛補助簿一冊(同押号の五三)、同年売掛帳一冊(同押号の五四)、同年日報一綴(同押号の九)、同年買掛帳一冊(同押号の二四)、同年源泉徴収簿一綴(同押号の六二)
(法令の適用)
被告人の判示第一及び第二の各所為は、いずれも所得税法第二三八条第一項前段(第一二〇条第一項第三号)に該当するので、所定刑中同項末段により各懲役及び罰金の併科刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから懲役刑につき同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い第二の罪の刑に法定の加重をなし、罰金刑につき同法第四八条第二項により各罪所定の罰金の合算をなし、右所定刑期及び所定金額の範囲内で被告人を懲役四月及び罰金四〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法第一八条により金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、懲役刑につき情状により同法第二五条第一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間その執行を猶予し、訴訟費用については刑事訴訟法第一八一条第一項本文により全部これを被告人の負担とする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 岡山宏)
別紙第一 昭和四一年損益計算書
<省略>
<省略>
<省略>
(専従者控除欄まで△印のみ収入勘定で他は支出勘定)
別紙第二 昭和四一年中ほ脱所得損益計算書
<省略>
昭和四二年損益計算書
<省略>
<省略>
<省略>
(専従者控除欄まで△印のみ収入勘定で他は支出勘定)
別紙第四 昭和四二年中ほ脱所得損益計算書
<省略>